こんばんは。海保けんたろー(株式会社ワールドスケープ代表/ドラマー)です。
ここを読んでいる方の中には、「メジャーデビューしたいなー」とか「武道館でライブしたいなー」と思っているアーティストの方もいるかと思う。
今日は、そんなあなたへのメッセージだ。
音楽業界は、わりとフェア
もしあなたが、アイドル・ビジュアル系・K-POPなどを含む「音楽業界の皮をかぶった芸能界」以外の、純粋な意味での音楽業界を志しているのであれば、「音楽業界は、案外フェアだ」という事実を伝えたい。
フェアとは何か。
それは、「ちゃんといい音楽を作っていれば、ちゃんとメジャーから声がかかるし、ちゃんとプロモーションしてもらえるし、ちゃんと給料や印税がもらえるよ」ということだ。
だから原則的には、もしあなたがメジャーデビューしたいのにできていなかったり、武道館ライブしたいのにできていない場合は、あなたの「音楽の良さ」が足りないだけだ、と言うことができる。
できる
…んだけど、完全にフェアかというとそうではないので、そこも伝えたい。
フェアである根拠
まず、なんでフェアだと思うのか?という点から話す。
ぼく自身、ずっとプロとして音楽活動をしてきたが、その頃に出会った「音楽業界人」は、案外多くない。
自分のバンドが所属していた事務所、レーベルの担当の人、プロデューサー、エンジニア…。
基本的に自分のバンドと直接関わりのある人ばかりだ。
考えてみれば当然で、ぼくらと一緒に動いてくれている業界人から見れば、他の事務所の人にぼくらを紹介するメリットはないし、他のレーベルの人に紹介するメリットもない。
だから当時は、案外「業界人の知り合い」というのは増えなかった。
しかし、ぼくはその後、音楽系の会社を起業した。
すると景色が全く変わった。
たくさんの音楽事務所やレコード会社やその他の業界人たちと出会い、話す機会を得られるようになった。
純粋にバンドだけをやってた頃の自分が「え〜〜うらやまし〜〜!」って思いそうなくらい、すごい人、偉い人にも会えるようになった。
そして、そういう人たちの本音を耳にすると、「音楽に対して、とてもピュアだな…」と思うことがすごく多い。
彼らの多くは、本当に音楽が好きで、素晴らしい音楽を作るアーティストのことを心からリスペクトしていて、そういう出会いを常に探している。
自分自身が「おおお…!かっこいい!!」とか、「うおお…感動した…!」とか感じる音楽を純粋に探しているし、そういう音楽を作るアーティストと契約して一緒に仕事がしたい、と考えている。
だから、小手先の宣伝方法や、ハリボテの実績ではなく、彼らをファンにさせるような音楽を作れば、それだけで話は進むのだ。
とても、フェアだ。
フェアじゃない部分
しかし一方で、完全にはフェアになっていないことも事実だ。
その要因、まず1つ目。
それは、「メジャーデビューするということは、最低でもこれくらいの売上を立てなくてはいけない、というラインを引き上げることになるので、マニアックだったり、流行からあまりに外れた音楽ジャンルだといくらクオリティが高くてもダメ」という点だ。
デスボイスオンリーのヘビーメタルバンドが日本でメジャーデビューしたという話を、ぼくは知らない。
いくらクオリティが高くても、必要な規模のファン数に達さないと予想されるからだ。
メジャーデビューや武道館を目指すなら、どうしても音楽性にある程度の縛りが発生してしまう。
これは、本当はあまり好ましくない。
音楽という文化が多様性を失ってしまうからだ。
要因2つ目。
これは当たり前なんだけど、「業界人は、全てのインディーズ/アマチュアアーティストを知っているわけではない」という点だ。
だからそれを知るために、オーディションを開催したり、ライブハウスに噂を聞きつけて行ったりしているのだ。
実際、オーディションで送られてきた音源は、ちゃんと全部聴かれていると思う(フルコーラスという意味ではない)。
デモテープ募集、的なことを書いている会社も、送られてきたものをほぼ全て聴いていると思う。
彼らは本当に、まだ見ぬ素敵なアーティストを本気で探しているのだ。
しかし、オーディションを開催しても、デモテープ募集を常時行っていても、「そういうのに全然送らないアーティスト」というのはかなりの比率で存在する。
だから実際に彼らは、空き時間にYouTubeの関連動画を漁ってみたり、ライブハウスの店長に「いいバンドいない?」って聴いてみたりしている。案外地道なのだ。
結局何をすればいいのかまとめ
もしあなたが「メジャーデビューしたい/武道館でライブしたい」って思っているのに、大手事務所やメジャーレーベルのオーディションに応募していないのであれば、それは今すぐやった方がいい。
その結果、10社以上に送っても一切反応がないなら、「音楽の良さが足りないか、ジャンルがマニアックすぎる、もしくは流行から遠すぎる」のどれかなので、修正を検討して欲しい。
ただしぼくはそれだけではなく、
・マニアックなジャンルのアーティストも、クオリティが高ければ音楽で生計が立てられるようになるべき
・CDが売れないせいでメジャーデビューの門があまりに狭すぎるので、インディーズでも生計を立てられる仕組みが整備されるべき
という考えを持っているので、それは引き続きFrekulによって実現していきたいと考えている。
いずれにせよ、大原則は「音楽の良さ」の重要性だ。
インディーズのライブハウス業界にどっぷり浸かっていると、「なんでこんなかっこいいバンドが売れてないんだ!なんでこんな泣ける歌を歌うシンガーが売れてないんだ!今の音楽業界はおかしい!」と言いたくなる気持ちはとても良く分かる。
だけど、「それって本当にONE OK ROCKよりもかっこいい?本当に宇多田ヒカルよりも泣ける?」という高い視点で、さらに一歩、さらに一歩と向上して欲しい。
[追記 2018年12月21日]
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この記事がヒントになり、あなたの音楽活動がより良いものになることを願っています。
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