JASRACの何が問題点なのかを解説するから、もう許してあげてほしい

こんばんは。海保けんたろー(株式会社ワールドスケープ代表/ドラマー)です。

今日の話は、悪名高き(?)著作権管理団体「JASRAC」についての話。

(2018/7/3 内容を最新のものにしました)

JASRACの炎上

こんなニュースが出て、JASRACがまた燃えている

音楽教室から著作権料徴収へ JASRAC方針、反発も:朝日新聞デジタル

Aさん「音楽教育の芽までつぶす気かー!」

Bさん「儲けることしか考えてないのかー!」

Uさん「私の曲は無料で使っていいからねー!」

とか色々な意見が噴出し、定例行事かのようにいつも通り炎上している。

一方でJASRAC関係者がTwitterで反論していたり、JASRAC擁護をする人もいたりする。

おそらく、音楽業界人でもない限り

「結局、どっちが正しいの?」
「JASRACはクソなの?クソじゃないの?」

の判断がつかないのではないかと思ったので、ぼくなりの解説をしてみようと思う。

前提として「JASRACって実際、なんなの?」ということについてはこ先にこちらの記事を読んでほしい。

>> 著作権とは?原盤権とは?JASRACとは?限界までわかりやすく解説してみた

彼らは必死に仕事をしているだけ

JASRACは、ざっくり言えば「作詞家や作曲家から著作権を預かり、それを使ってなるべくたくさんのお金に変えて還元するための団体」だ。

だから、

「音楽教室からも利用料を取るなんて!業界全体のことを考えてない!」
「地元の小さなライブバーにも職員が集金に来た!セコい!」

という批判は、気持ちはわかるけど、理屈としては若干ズレている。

彼ら(JASRAC)は、必死に、真面目に仕事をしているだけなのだ。

「取れそうなところがあれば、なるべく大金を取る」というのが彼らの仕事なのだから。

JASRAC信託せざるを得ない理由

それでも、「ひどい!」とか「何もそこまでしなくても!」と思う気持ちはとてもよく分かる。

そして、その気持ちをストレートにぶつけると、

「じゃあ、曲作った人はJASRACに権利を預けなければいいじゃないですか」
という反論が出てくる。

確かに、JASRACのやり方に納得がいかないなら、作詞家・作曲家はJASRACに自分の曲を信託しなければいいのだ。

理屈としては間違いない。
理屈としてはそうなのだが、現実的には難しい。

個人的には、知名度が高くない曲はJASRAC信託しない方がメリットが大きいと思っている。

しかし、曲が広く使用される可能性が出てくると、JASRACに信託せざるを得ない

その理由は下記の2点だ。

・印税収入が減る可能性があるから

・めんどくさいやつだと思われるから

それぞれ解説する。

理由1:印税収入が減る可能性があるから

今の日本でJASRACに信託しないということは、

・どこにも信託せずに自己管理する

・NexToneに委託する

の実質2択になる。

どちらの場合も、回収能力がJASRACと比べて劣るのは避けられないため、
作詞者・作曲者としては印税収入が少なくなる可能性が高い

(NexToneは演奏権に関する印税が回収できないという弱点がある)

これは権利者としては言うまでもなく無視できない要素だ。

理由2:めんどくさいやつだと思われるから

NexTone(イーライセンスとJRC)が出てくるまでは、著作権管理団体は実質的にJASRACしかいなかった。

そのため、あらゆる業界で「JASRACを使うことが当たり前」になっているのだ。

例えば自分の曲がテレビで使われることになって、「それじゃあ著作権管理団体に信託しましょう」ってなったら、
ほとんどの場合は特になんの打診もなくJASRACに登録する手続きが取られる

そこで、作家本人が「ストップ!」と言って「ぼくの曲はNexToneにしてください!」と言わなくてはいけないのだ。

特にまだまだ駆け出しのアーティストが「テレビでオレの曲が使ってもらえる…!」という時に
相手の業界人の手続きに待ったをかけるというのは、かなり心理的に難しいと言える。

しかもその業界人もNexTone信託をやったことがなかったり、そもそも知らなかったりするのだ。

そうすると「なんか面倒なこと言い出したなこいつ…。だるいから他のやつの曲使うか…」と
思われてしまうリスクだってあるのだ。

どうしたらいいのか

というわけで、

「じゃあ、JASRACに権利を預けなければいいじゃないですか」

と言われても「はい、じゃあそうします」と簡単にできない事情が分かってもらえたかと思う。

つまり、トータルでみたら「JASRACに登録せざるを得ない」といえる状況でありながら、
JASRACのやり方に疑問を感じている権利者が一定数いる
、というのが問題の本質なのだ。

これを根本的に解決するためには、権利者に選んでもらえるように「JASRACに信託する、以外の選択肢」を盛り上げていくしかない。

そこに健全な競争が発生すれば、権利者と利用者がより便利で幸せになる形が浮かび上がってくるはずだ。

※ほんとはもうひとつ、JASRACには「権利者への分配額や分配方法が不明瞭」という大きな問題点があるんだけど、それはまたの機会に

この記事がヒントになり、あなたの音楽活動がより良いものになることを願っています。

「 音楽活動で生計を立てるための全知識 」もご覧ください。ご好評いただいてます。

▼この記事をシェアする

SNSでもご購読できます。