岡崎体育さんのファンクラブが炎上。その経緯と詳細を解説します

こんにちは。海保けんたろー(株式会社ワールドスケープ代表/ドラマー)です。

先日、岡崎体育さんが新しい発想のファンクラブを立ち上げて、ネットを中心に炎上したようです。

それに関連して思うところがあったので、この記事に考えをまとめてみました。

岡崎体育さんの新型ファンクラブ「bitfan」

今月頭の、こんな告知から話はスタートします。

この「bitfan」なるシステムは、ファンクラブ運営大手のSKIYAKI社が作った新しいサービスです。

簡単に説明すると、

「アーティストのグッズを買ったり、SNSで情報を拡散したりするとポイントがもらえて、
ポイントをいっぱい集めるとアーティストと握手したり写真撮ったりできる」
という機能が追加されたファンクラブ

です。

ポイント上位のファンはランキング形式で公開されるとのことで、
とても新しくて面白い取り組みだな〜と思ったのですが、

こうなって、さらに

こうなってしまいました。

アーティストがお金を稼ぐ方法

言うまでもありませんが、音楽活動をアクティブに続けていくためには、お金を稼がなくてはいけません。

そしてアーティストがお金を稼ぐ方法は、ざっくり分類すると下記の3つです。

  1. 少数の熱心なファンからいっぱいお金をもらう
  2. 多数の軽めのファンから少しずつお金をもらう
  3. 企業からお金をもらう

このうち、まず「3」は昔からあるものの、まだまだ規模が大きくありません

具体的にはライブツアーのスポンサー契約だったり、
YouTubeの広告売上分配だったりですね。

JASRACが回収してきた楽曲利用料の分配を受けるのも「3」の一種と言えるでしょう。

そして、CD全盛の時代は「2」が最強でした

年に数回発売されるシングルのうち1〜2枚と、年に1枚発売されるアルバムを買うけど、
ライブに行くほどではないというような、年間4000〜5000円程度を課金するライトファン。

これが全国に数十万〜数百万人いることで、音楽ビジネスは成り立っていました。

しかしご存知の通り、そんな時代はとっくに終わっています。

そうなると白羽の矢が立つのは「1」です。

「少数のファンからいっぱいお金をもらう」というモデルは、近代音楽業界があまり取り組んでこなかったスタイルです。

なぜ取り組んでこなかったのでしょうか?

その大きな理由のひとつは「見え方が良くないから」です。

アーティストは基本的に「お金やビジネスには興味ない」というイメージを持たれている方が得です。
(これについては前回の記事をご参照ください >> アートと商業的成功(ポルカドットスティングレイの記事に衝撃を受けた話) )

「1」の施策は、そのイメージを保つのが難しいことが多く、今まであまり積極的に取り組まれてきませんでした。

しかし「2」が崩壊しつつある今、そうは言ってられません。
「1」をいかになるべくイメージが悪くならないようにしながら実現するか?が鍵になってきました。

秋元康さんは「1人に同じCDをたくさん売る」という方法に挑戦しました。
海外アーティストの一部は「ライブ最前列を超高値で売る」という方法を取り入れています。
クラウドファンディングの高額プランも、同様の施策と言えるでしょう。

どれも、人によっては眉をひそめるかもしれません。
でも、アーティストがプロで居続けるためには、こういったことをせざるを得ない時代がきているのです。

I7D_2979_2_original

収益性とイメージのバランス

このような前提を踏まえると、岡崎体育さんのbitfanはとても時代性を捉えた挑戦だったように思えます。

たくさんのお金を使ってくれたファンを、公然と贔屓することによって
「1」となってくれる人を少しでも増やしていこうという狙いです。

それだけだと「お金使ってくれた人ランキング」みたいになってイメージが悪いので、
「Twitterでつぶやいてくれた人にも少しだけポイントが入るよ」というようなものを導入することにより
あくまでお金だけのランキングではない、という見せ方を実現しています。

ぼくとしては、これはとてもバランスの良いやり方のように見えました。
(実際、多くのライブ配信サービスなどではこのような見せ方で配信者のイメージを守っています)

しかし、敏感な一部のリスナーにはこれは受け入れられなかったようです。

これはとても残念なことです。

批判派の人達の言い分は、断片的には理解できます。

「お金がない人だって大切にしろ」
「お小遣いが少ない中高生の気持ちを考えろ」

はい。
そうですよね。
とっても「正義の味方の意見」という風に見えます。

しかし、現実として「1」を押し進めなければアーティストはプロでいられないという前提があるのです。

そこの解決策を提示しない限り「気持ちは分かるが、仕方ないだろ」としか返しようがありません。

改善プランが提示されたけど

岡崎体育さんのbitfanについてはその後、改善プランが提示されました。

要は、
使った金額による差別を最小限にして、お金を使わない応援(情報拡散)に対するお礼は手厚くする
という内容です。

これは、収益性を犠牲にして、イメージの悪化を防ぐ方向に寄せただけに過ぎません。

つまりこの変更によって、岡崎さんがプロアーティストで居続けられる可能性は下がったのです。
(岡崎さんは能力があるので大丈夫だと思っていますが、可能性の話です。念のため)

プロでなくなるということは、音楽以外の仕事をしなくてはならなくなるということです。

つまり作品づくりやライブの、頻度とクオリティが下がるということです。

今回の件で文句を言った方々は、それを望んでいたのでしょうか?
少なくとも、自分はそういう行動を取ったんだという自覚は持ってほしいなと思います。

後発のアーティストにとってはプラス

とは言え、音楽業界全体で言えば今回の件はプラスになると感じています。

なぜなら、岡崎さんを支持する声もたくさん上がっていたからです。

岡崎さんがある意味人柱となったことで、
これからアーティストは似たような施策を始めやすくなります。

「何これ?斬新っぽいけどなんか怪しい…大丈夫?」
とファンに思われずに、

「要は岡崎体育と似たようなことをはじめるんだな」
と思ってもらうことができます。

そうやって新しい挑戦をするアーティストが増えてくれば、
徐々に「ファンクラブというのは、ある程度序列があるものだ」というのが常識になり、
アーティストはイメージ悪化を気にせずに収益化を進めることができるようになります。
(AKB商法がアイドル業界を救ったように!)

そうすれば、今よりもっとプロとして活動できるアーティストが増えて、
ファンにとっても、アーティストにとっても幸せな社会がきっと待っているはずです。

これを読んだあなただけでも、新しい挑戦をするアーティストを暖かく応援してあげてくださいね。

「 音楽活動で生計を立てるための全知識 」もご覧ください。ご好評いただいてます。

▼この記事をシェアする