日本のライブハウスと欧米のライブハウスの違い。チケットノルマがないって本当?

こんにちは。海保けんたろー(株式会社ワールドスケープ代表/ドラマー)です。

先日アメリカに行った際に、現地で活動するバンドマンの方とお話するチャンスがありました。

今日はその時の話を。

日本のライブハウスが抱える諸問題

ライブハウスの抱える問題は定期的に界隈で話題になります。

例えば

  • バンドマンからお金を取ってビジネスをしている!
  • ライブハウスが集客する努力をしない!
  • 飲食物や接客などのクオリティが低い!
  • 出ているバンドのレベルが低い!

などなど。

そしてそれに付随して時々見かけるのが「欧米のライブハウスはこうじゃない」という言説です。

ぼくは「そうなのか〜」と思いつつ、あまりリアルな現場事情が分からなかったので、このチャンスに色々聴いてみることにしました。

あくまで1人に聴いただけなので、これが欧米全体の傾向とは断定できませんが、
アメリカで活動する1人のバンドマンの視点でのレポートだと思って読んでいただければと思います。

(ぼくが理解した内容を噛み砕いて書いてるので、間違ってる点があるかもしれません。「違うぞ」という方はTwitterなどでご指摘いただければ幸いです。)

アメリカのライブハウス事情

まず日本と大きく違うのは、アメリカは「ライブハウス」という業態はあまり一般的ではない言うことです。

そのかわりに「バー」スタイルのお店が多くあり、そういった店舗でライブが行われています。

カウンター席があって、テーブル席が少しあって…みたいな感じのお店ですから、機材は十分ではありません

モニタースピーカーがなかったり、ドラムにマイクが立っていなかったりします。
しかしそれが普通なのですから、リスナーもアーティストもそこに不満はなさそうです。

むしろ日本のライブハウスの機材が豪華すぎるとも言えるのかも知れません。

アメリカには居酒屋という業態も多くないので、仕事が終わって一杯飲みたいと思った人たちはそういったバーに行きます。

そこで1杯2杯と飲むうちにバンドの演奏が始まります。

もしもそのバンドの演奏が好みだったら、そのままその場に居続けて34杯と飲み続けます。

しかし逆にバンドが好みじゃなかったりレベルが低かったりするとお客さんはすぐに出て行って、近くの別のバーに移動してしまいます。

そのためお店には「なるべくレベルの高いアーティストをブッキングしよう」というインセンティブが働きます。

バンドはチケットノルマなしで出演して、CDを売ったりファンを獲得したりすることができる
バーはいいバンドをブッキングすることで、お客さんがとどまり飲食物の売上があがる
というwin-winの関係が成立しているのです。

190_large

日本とアメリカが違う2つの理由

ではなぜ日本のライブハウスはこういう形になっていないのでしょうか?
大きな原因は2つあるとぼくは考えます。

1つは住宅事情の違いです。言うまでもなく日本よりもアメリカの土地が広く、敷地に余裕があります。

日本の便利な立地でライブハウスを運営しようと思ったら、かなりしっかりした防音工事を行わなければ、すぐに騒音苦情がきてしまいます。

しっかりと防音をして、しっかりとした音響機材や照明機材を入れて、しっかりとスタッフが付きます。
つまりそれだけライブハウス側の初期投資や運営費がかかるということになります。

そうなってくると、飲食物の売り上げだけでビジネスを成立させることは難しくなります。

逆にアメリカのバーのように小さな店舗で、少ない機材で、最小限の防音対策でという形であれば、立てなくてはいけない売上のハードルは下がります。
飲食物の売上で賄うことができるのであれば、バンドにチケットノルマを課す必要もありません

もう1つの理由は、飲みに行く側の文化の違いです。

日本人の多くは仕事が終わった後に音楽の鳴る場所に行くよりも、居酒屋で飲むことが一般的です。

生演奏があるバー自体が多くないということも原因かもしれませんが、
ライブハウスに行ったら行ったで演奏の音量が大きく「聴きながら友人と会話する」というのはほぼ無理だというのも大きな理由なのではないでしょうか。

だからと言って音量が小さめのライブハウスが1つ2つできただけで「ライブハウスに飲みに行く」という文化が広がるのは時間がかかりそうです。

もっとオープンでライトな感じのお店が増えてくればいいのですが、騒音問題があるのでなかなか欧米のようなスタイルが実現できません。

日本で欧米型を実現する方法

一概にどちらが良いとか悪いとか言うことではありませんが、
日本でも欧米のような飲み方(ライブの仕方)ができる地域があればいいのに、と個人的には思います。

例えば「誰からも騒音苦情が来ない」という前提があれば、初期投資を抑えたライブバーを作りやすくなります。

「10時〜22時は原則的に演奏に対する騒音苦情禁止」というようなルールを定めた「音楽特区」でも作ればいいのでしょうか。
そうすればそこに演奏ができるバーと、アーティストと、音楽好きの人達と、音楽関係の企業が集まる街ができるかもしれません。

どうでしょう?ちょっと楽しそうじゃないですか?

地方自治体に関わる方がこれを読んでいたら、ぜひともご検討ください。協力します。

ではでは、また!

「 音楽活動で生計を立てるための全知識 」もご覧ください。ご好評いただいてます。

▼この記事をシェアする