音楽業界の問題

謝罪と反論(動員がないならライブ止めろ記事について)

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おはようございます。海保けんたろー(株式会社ワールドスケープ代表/ドラマー)です。

一昨日公開した記事がちょっと話題にしていただけているようなので、今日はその記事について。

まだ読んでない方は先にこちらを。

>> 動員の少ないバンドはライブするのを止めてもらえないだろうか

とってもたくさん読まれた

まずは、賛成・反対を含めて何かしらのリアクションをくださった方、SNSでシェアしてくださった方に感謝したい。
ありがとう。

おかげでぼくのことを元々知っている人だけでなく、ぼくのことを知らなかった人の目にも記事を届けることができた。

ぼくから見えている範囲では、
全面賛成3 : ほぼ賛成3 : ほぼ反対2 : 全面反対2
くらいの比率でリアクションをいただいている。

ぼくから見えていない範囲ではもうちょっと賛成率が低い気がするので、それを考えると賛否半々くらいなのかもしれない。

それにしても、攻撃的なタイトルの記事の拡散力の強さを実感するばかりである。

ぼくとしては、書いている内容はいつも通りのテンションのつもりだ。

元々このブログでは歯に衣など着せていないし、特別気合を入れて書いたというわけではない(毎回それなりの気合を入れている)。

しかし、昨日の記事はこのブログでこれまでに最も読まれたものとなった。

これはもう、ひとえに攻撃的タイトルのなせる業である。

振り返れば、前回拡散された記事も「あなたがメジャーデビューできないのは、音楽が良くないからだよ」という攻撃的タイトルだった。

これはもちろん、話題になることで問題提起が広まることを狙っているのだが、今回の記事については皆さんに謝りたいことがある(その後に反論もある)。

1つ目のミス

実はぼくは、今回の記事について2つミスをした

1つ目は、タイトルを攻めすぎたことだ。

どんなに良い問題提起でも、ごく少数の人にしか読まれないのであれば、その効果は限定的だ。

多くの人に読まれ、考えるきっかけになり、議論が深まり、空気が変わっていくことを目指すのなら、
「SNSで拡散される」というのは重要なポイントだ。

そして、残念ながらそれは攻撃的なタイトルをつけることにより、高確率で実現できる。

記事をしっかり読んでくださったなら伝わっていると思うが、
実際には
「動員の少ないバンドはライブするのを止めてもらえないだろうか」
というタイトルは
「(チケットノルマを課された上で、その数よりも)動員の少ないバンドは(その規模のライブハウスで)ライブするのを止めてもらえないだろうか」
という意味であるため、誤解を招く表現だ。

しかしそれでも拡散されるメリットの方に踏み込んだ。

これが、今となってはちょっとそちらに寄せすぎたと反省している。

「チケットノルマ以下しか動員できないバンドは、ライブを休んで頭を使え」
くらいにしておくべきだったなと、今は思う。

2つ目のミス

2つ目のミスは、記事更新を告知したツイートだ。

こちらの文言もよくなかった。

記事本文を読んでくれれば分かると思うのだが、キーポイントは「何人動員できるか」ではなく、「チケットノルマ以上の動員ができるか」である

しかしこのツイートによって、全ての前提条件が無視され、「動員10人以下=悪」と語っていると間違って捉えられることになってしまった。
(ちなみに本文中には一度も「10人」という言葉は登場しない)

これが2つ目のミスだ。

正直、完全にやっちまっている

この2つのミスに誘導されてしまった結果不快な思いをされた方々に対し、大変申し訳なく思っている。
心よりお詫び申し上げたい。

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反論が飛んでくる

ぼくは投稿して少しした後「やべ〜〜〜」と思ってまずは記事タイトルを変更したのだが、すでにSNSでシェアされていたので、
これでは飛んできた人が混乱するだろうと思い、もとに戻した。

さらにツイート文もすでにリツイートやリプライをいただいてしまっていたので、そのままにすることにした。
(せめて本文でしっかり誤解が解けるように少し修正した)

つまり、タイトルやツイート文は誤解を招くかもしれないけど、本文さえちゃんと読んでくれれば、誤解は解けるはず、という状況になった。

しかし、その後飛んできた反論のほとんどはタイトルやツイート文しか読んでないと思われる内容だったり、感情論に過ぎず何の反論にもなってないものばかりで、今のところ全くしっくりきていない。

中には「どんなバンドも最初は動員少ないですよね?」とか「動員少なくても素晴らしいバンドはいますよ?」というような、ため息のでるリプライもある。

願わくば、本人にリプライを飛ばす前に記事を最後まで読んでほしい
狭いライブハウスで5人しか動員していないバンドのチケットノルマが3枚だったら、そのバンドは問題ないのだ。

誰か、教えてほしい

ぼくは、常にぼくの意見が正しいとは全く思っていないので、
もし間違っているなら指摘されたいし、納得することにより成長したいのだ。

実現方法が書いてないとか、結果そうなるかは疑問、みたいな意見はまあ、分かる。
「そうですよね」という気持ちだ。
実際、ぼくは実現方法については記事内で言及していないだけだし(もちろんとても難しい問題だが、方法論の手前でまず理想論を語るべきだ)、
それに、どんなことだって結果は誰にも分からない。

「現場を分かってない」とか「読む価値なし」みたいな感情論を飛ばすくらいなら、論理的な反論をいただけないだろうか
それが音楽業界を良くしていくための建設的な議論なのではないだろうか?

「不快」とか「極論」とか言うのは簡単だ。
ではあなたは今のライブハウスを取り巻く環境が理想的だとでも言うのだろうか?
どうしたらこれらの問題が解決するか、ぼく以上に考えているのだろうか?

それならばぜひTwitterで教えてほしい。

そして大変申し訳ないのだがその際は、ぼくがミスってしまった記事タイトルやツイート文に惑わされることなく、本文について論じていただけるとありがたい。

ブログで意見を発信していくメリットのひとつは、自分の間違いを誰かが正してくれる可能性があることだ。

次には

悪態をばらまいた人みたいになるのは本意ではないので、次回更新では、
駆け出しのアーティストが自力でできるプロモーションにどんなものがあるかを、
具体的にリストアップして、1つずつ紹介してみたいと思う。

ぼくは本気で音楽業界を良くしたいと思い、日々努力を続けている。
毎日少なくとも8時間は音楽業界のことを考えている。

ぼくがバカなのかもしれない。
何か間違っているのかもしれない。

でも、だとしたら、あなたの優しさで、その間違いを教えてもらえないだろうか?

ぼくは嫌味でも煽り文句ではなく、心から本気でそう思っている。

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動員の少ないバンドはライブするのを止めてもらえないだろうか

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こんばんは。海保けんたろー(株式会社ワールドスケープ代表/ドラマー)です。

言いたいことはタイトルに書いてしまったが、要は「動員数がとても少ないバンドはライブを減らしてほしい」というぼくからのお願いである。

以下、その理由を説明したい。

趣味バンド、ノルマなしバンドはいい

まず、先に誤解を避けておきたいのだが、
「オレたちは別に売れたいとか、プロとしてやっていきたいとかは思ってない!社会人として働きながら、趣味としてライブをしたりしたいんだ!」
というバンドは、この件に該当しない。

そういう音楽活動は大いにアリだと思うし、そういう人たちにつべこべ言う気もない。
大いに趣味を楽しんでほしい。

あと、「チケットノルマいらないから出演してくれ」と言われてライブハウスに出演しているバンドもこの限りではない。
そういうバンドは、お金以外の何かしらの理由でライブハウスに求められているから、問題ない。

問題なのは、いわゆるプロ志向でありながら、チケットノルマを課され、それ以下の動員しかできない、というようなバンドである。

はっきり言おう。
そんなバンドたちが、今のライブハウス業界を腐らせているのだ。

ライブハウスを取り巻く問題

普段ライブハウスに出入りする習慣のない人はピンとこないかもしれないが、
ライブハウスを取り巻く問題は色々ある。

よく声が上がるのはこのあたりだろうか。

・スタッフが愛想悪い、分煙がされていない、ドリンクが薄い、食べ物がない、などの「ライブハウス・サービス悪い問題」

・集客についての努力をほとんどせず、出演するバンドの集客に全面的に頼っているという「ライブハウス・集客しろ問題」

・本来は協力関係にあるはずの出演するバンドからお金を取ることで、商売を成立させているという「ライブハウス・チケットノルマ問題」

どれもずっと言われている根の深い問題だ。

しかし「チケットノルマ以下しか動員できないバンド」がライブをやめることによって、これらはすべて解決する

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問題解決の流れ

例えばチケットノルマ分も動員できないバンドが、来月から一斉にライブをやめた場合、どうなるか考えてみてほしい。

少なくともキャパ100〜300くらいの都内ライブハウスは、出演者が激減してスケジュールの7〜8割が空くことになるだろう。

出演者がいないということはもちろん集客もできないので、売上が立たなくなる。

結果、家賃や人件費が支払えなくなり、つぶれる。

ぼくの感覚では、おそらく7〜8割のライブハウスが成立しなくなると思う。
都内のライブハウスが、一気に4分の1程度まで減るのだ。

では、この「残るライブハウス」はどんな所だろうか?

それは、音もいい、立地もいい、スタッフの愛想もいい、分煙がされている、飲食物がおいしい、集客努力もしている、そんなライブハウスではないだろうか?

ライブハウスの生き残り合戦を引き起こせれば、
その過程でライブハウスのサービスレベルはぐんと向上
し、
向上できなかったライブハウスは消えるのだ。

そして当然、ライブハウスが激減するということは、そこに出演できるバンドの数も激減する

音楽的にも素晴らしく、集客もできる、レベルの高いバンドしかライブハウスに出演できなくなるのだ。

そうなるとチケットノルマなどの制度を設ける必要もなくなる

「今夜は暇だから駅前のライブハウスに寄ってってみようかな」というお客さんだって増えてくるはずだ(今は皆無と言っていい)。

理想的ではないだろうか。

しかし、残念ながら現状はそうなっていない。

なぜなら、動員できないバンドが喜々としてチケットノルマを支払うことによって、ダメなライブハウスを生き残らせてしまっているからだ。

本当にやめてほしい。

以下、ありそうな反論

Q.駆け出しのバンドが場数を踏むための場所は必要だ!

A.そうですね、広めの練習スタジオにお客さん入れてやったり、ライブバー的な狭いところでやればいいと思います。

Q.数が少なくたって楽しみにしてくれるファンがいるんだ!

A.同上です。

Q.ライブ本数減らしたら新しいファンを掴む機会が減る!

A.自分の動員が少ないなら、対バンの動員も大抵少ないですよね?だとするとそのやり方は効率悪いので別の宣伝方法考えたほうがいいと思います。

Q.そんなライブハウスばかりじゃない!●●はとても素晴らしいハコだ!

A.そうですね、例外はあります。そこはきっと生き残るから安心してください。

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※誤解をまねきそうな表現を、一部修正しました(2017/5/8 13:30)

※追記記事はこちら >> 謝罪と反論(動員がないならライブ止めろ記事について) (2017/5/10 7:04)


チケット転売問題・オリラジ中田さん案には穴があるから指摘するね

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こんばんは。海保けんたろー(株式会社ワールドスケープ代表/ドラマー)です。

オリエンタルラジオの中田さんのブログ記事が、にわかに話題になっている。

>> オリエンタルラジオ 中田 公式ブログ – オリラジ中田、転売撲滅の画期的システム発表!

チケットの転売屋問題についてどう対応していくべきか、新しいアイデアを考えたから実行します!という記事だ。
これを考え、分かりやすく説明し、実行するということに、心から拍手を送りたい。

転売屋問題は音楽業界においてとても重要な問題であるし、それに対して一石を投じるこのアイデアはとても素敵だと思う。

だが、ぼくから見ると抜け落ちている発想があると感じたため、エールを込めて指摘したい。

具体的に言うと「チケットの購入タイミングが変化すること」について考慮されていないのだ。

以下、詳しく説明する。

ジャスト・キャパシティ・システムについて

元記事は長文であるし、読んでいないという方もいると思うので、中田さんのアイデア(ジャスト・キャパシティ・システム)について、まずはぼくの理解を共有しておく。

さまざまな規模の複数会場を「仮押さえ」する

会場未定のままチケットを販売開始する

最初の売れ行きを見て会場を決め、他の会場はキャンセル(仮押さえ解除)する

さらに売れ行きを見て、会場の座席数を決める

チケットはキャンセル不可だが、どうしても行けなくなった人は1000円引で転売できる

本当にライブに参加したい人のほとんどがチケットを購入でき、転売目的で買った人は大損する(解決!)

ということである(間違ってたら指摘してほしい)。

このアイデアだと、

・会場が、高確率で解除される仮押さえを受け入れなくてはいけない
・ライブ参加者が、購入時に会場が分からない

というマイナス要素があるものの、確かにトータルとしては素晴らしいように見える。

しかし、現実的にはこうならないとぼくは考える。

JCSの穴

ジャスト・キャパシティ・システム(以下JCS)を採用したライブは「チケットが(少なくとも早い段階では)売り切れない」というのが特徴である。

これは購入者側から見た場合「チケットを早く購入する理由(インセンティブ)」がない

多くの人は「早く買わないと売り切れちゃうかも」と思うから、発売直後に必死に購入するのだ。

それが逆に「1週間前とかでも購入できるはず」と思っていたらどうなるだろうか?

多くの人は「何か急な予定とか入るかもしれないし、もっと日程近づいたら買おう」と思うのではないだろうか。

しかもJCSの場合は直前なら、1000円引での転売チケットを購入できる可能性がある。

「どうしても絶対にこのライブに参加したい!」と思っている一部の特別熱心なファン以外は、そちらを視野に入れるのではないだろうか。

そうなると、JCSの前提は揺らいでくる。

「売れ行きを見て会場を決める」
「売れ行きを見て座席数を決める」

こういった判断が、正しくできなくなるのだ。

すると販売数の見積りを誤る可能性が高まり、

「小さすぎる会場を押さえてしまい、結局転売屋が儲かる」
「大きすぎる会場を押さえてしまい、ライブが赤字になる上にガラガラになる」

ということが発生してしまう。

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インディーズバンドの現実

「そんなことはない。行きたい人はちゃんと早めにチケットを買うはずだ」と思うだろうか?

その意見への反論は、すでに全国のライブハウスにある。

いわゆる「インディーズアーティスト」と呼ばれているバンドやシンガーソングライターのライブは、その多くが完売しない

例えばそういうバンドがワンマン(単独)ライブのチケットを販売した場合、だいたい売れ行きはこんな感じになる。

チケット発売直後に一部の熱心なファンが購入する

その後まったく売れない

ライブ1〜2週前からまた少し購入が入り始める

ライブ前々日〜前日が最も売れる

「少なくとも早い段階では売り切れないと分かっているライブ」のチケットに対する購入者の反応は、こういうものなのだ。

これでは、JCSのような動きが難しいというのは分かっていただけると思う。

「チケット販売を早めに終了すればいい」とか言われそうだが、
それはただ総動員数が減るだけなので、主催側・出演側としてはやりたくないのだ。

どうすればいいのか

否定ばかりを語っていても建設的ではないので、ではどうすればいいのか、という部分についても触れたい。

要は購入者側に「チケットを早く購入するインセンティブがない」という点が問題であるわけなので、
そこを作ってあげればいいのである。

とは言っても「早期購入特典(グッズなど)を用意する」などは、主催側の労力やコストになってしまう。

そこで、ぼくは「チケット販売業者が早期購入特典を用意すべき」だと考える。

具体的には「このサイト経由でチケットを購入すると、最初の100人にはTポイント1000p、次の100人には500p、次の100人には200pが〜〜」みたいなことをするのである。

Tポイントがいいのか楽天ポイントがいいのか、もしくはポイントではない何かの方がいいのか、というような議論は置いておくとして、
ライブ主催側ではなく、チケット販売業者が早期購入を促す機能を持つ、というのが重要なのだ。

そうすると主催側は「最も早期購入されやすいサイトでチケットを販売しよう」という選択ができるようになり、
販売業者間で健全な競争が行われるようになる。

チケットぴあ、ローソンチケット、イープラス、EMTG、Peatix、ticket board、tixeeboxなどなどの中の皆さん、ぜひご検討を。

繰り返しになるが、中田さんの考え方は素敵だと思う。成功してほしい。
だからこそ、率直に書かせていただいた。

JCS”改”が音楽業界を救うことを、期待したい。

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芸術家がビジネスについて語るのは損だけど語ってもらいたい

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こんばんは。海保けんたろー(株式会社ワールドスケープ代表/ドラマー)です。

今日はまず、あなたの好きな芸術家(ミュージシャン、イラストレーター、写真家など)を1つ思い浮かべてほしい。

…良いだろうか。

その人物が、ビジネスについて語っていたらどう思うだろうか?

「売上をアップさせるためにこういうことをしています」
「こういう人たちをターゲット層として宣伝戦略を練っています」
「作品づくりの時は、話題性を生む仕組みを考えて仕込みます」

という発言を聞いたら、あなたはどう思うだろうか。

がっかりする?
逆にもっと好きになる?
なんとも思わない?

芸術家がビジネスを語ることについて、ぼくの意見をまとめてみたのがこの記事である。

ビジネスを語る芸術家

ビジネスについて語る芸術家、というとどんな人が思い浮かぶだろうか。

例えば、AKBグループのプロデューサーとして知られる秋元康さんは、作詞家でもある。
実際に多くの曲の歌詞を制作しており、そういう面では芸術家と言えるだろう。

近いジャンルで言うと、J-POP界に一時代を作り上げた小室哲哉さんも、作詞作曲家である。
同時に、すぐれたビジネスマンであることも疑いの余地がない。

音楽プロデューサーという枠以外で考えると、例えばサカナクションの山口一郎さんも、
かなりビジネスや戦略について語る芸術家と言えるのではないだろうか。

音楽以外で言うと、キングコングの西野亮廣さんは絵本作家という芸術家であると同時に、
ブログなどではかなりビジネス的な発言が多い。

また、「ブラックジャックによろしく」を無料開放して話題になった佐藤秀峰さんは漫画家であり、
漫画業界に新風を巻き起こしている会社の代表でもある。

このように、ビジネスについて語る芸術家というのは珍しいわけではない。

しかし一方で、B’zも、西野カナさんも、ゲスの極み乙女も、蜷川実花さんも、草間彌生さんも、ビジネスについて語ることはない(たぶん)。

見渡してみれば、多くの芸術家が「ビジネスについて語らない」という選択をしている

芸術家がビジネスを語らない理由

なぜ多くの芸術家はビジネスについて語らないのだろうか。

最初に直感的に浮かんできそうな答えとしては「そもそもビジネスの専門家ではないから、語ることがない」あたりであろうか。

しかしこれに関してはぼくは同意できない。

一定の成功を収めている芸術家は、ほぼ例外なくしっかりとしたビジネスマインドを持ち合わせているからだ。

なんとなく浮かんでくるイメージを、なんとなく周りにいたメンバーと、なんとなく発信しているだけで成功するほど、「芸術で食っていく」というのは甘くない。

逆に言えば「芸術で食えている人」の多くは、ビジネス的な部分についてもしっかりと学び、考え、実行してきた人だと言える。

彼らが「語ることがない」とは、ぼくには到底思えない。

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わざと語っていない

すると有力になってくるのが「語るべきではないと思っている」という説だ。

最初の質問を思い出してほしい。

あなたが好きな芸術家がビジネスについて語っているのを聞いたら…

「がっかりする」

と思った方もいるのではないだろうか。

「もしかしてあの素敵な歌詞は、計算に基づいて狙って書いたものなのかな…」
「もしかしてあの情熱的な表情は、戦略的に演じてるものなのかな…」

と考えてしまう方が出てくるのは、十分に想像ができる。

これは、芸術家にとってかなりキツイ

今後、どんないい作品を生み出したとしても
「これはあなたの想いとか感情とかじゃなくて、戦略的に作られた”商品”なんでしょ」
と思われてしまう
のだ。

そんなリスクがあるくらいなら、ビジネスについて語るべきではない

そう思うのは自然なことだ。

それでも語ってほしい

というわけで、

結論!芸術家はビジネスについて語るべきではない!

と言って終わりたい気持ちもあるのだが、実はちょっと引っかかっている

前述した通り、成功した芸術家はほぼ例外なくビジネスマインドを持ち合わせている。

しかしその事実があまりに隠されて過ぎていると、後進たちはビジネスマインドの重要性に気付かない

例えばMr.Childrenの桜井さんだって、明らかにかなり戦略的に動いてきた人だと思うのだが、
世間一般から見たキャラクターは「音楽をひたすら愛する、純粋なアーティスト」という印象だ。

桜井さんが音楽を愛しているのは嘘ではないと思うが、それだけではないというのも事実だ。

やはりそこを裏で支えるビジネスマインドがあったからこそ、商業的な成功をおさめられたのだと思う。

だからもしあなたが芸術家で、しかも一定の成功をおさめているのであれば、
後進のために少しだけでいいからビジネスについても発信をしてほしい。

そしてもしあなたが芸術家の卵であるのなら、純粋な芸術性を追求するのと共に、
ぜひビジネスという切り口からも自分の活動を考えてみてほしい。

あなたが真摯に作品づくりを続けていれば「がっかりする」と思った人にも、いつかは想いが伝わるはずだ。

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JASRACの分配の不明瞭さをどうにかしたい

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こんばんは。海保けんたろー(株式会社ワールドスケープ代表/ドラマー)です。

先日JASRACについて書いたところとても反響をいただいたので、それを受けての続編になります。

前の記事をまだお読みでない方はこちらをぜひ

ぼく、ウソつきました

いきなりだが、本当にごめんなさい(土下座)

前回の記事がたくさんの方に読まれた結果、お二方ほどに「ウソ書いてんじゃねえ!」的なツッコミをいただきまして。

「えっ?ぼく間違ってないよね…?」と思いつつ調査を進めた結果、1つ思いっきり間違ってた次第であります。

つまりテレビ局側から見れば、どうせお金を払っているJASRAC楽曲の場合は、さっと気軽に使えるのだ。

逆に、自己管理だったり、NexTone楽曲だったりすると、イチイチ別途で申請した上で、別料金を払わなくてはいけないということになる。

「じゃあJASRAC曲でいいや」
となるのはご想像いただけると思う。

こうなってしまった場合も、権利者にとっては大変な不利益である。

上記の部分。

実際は2015年度からは、JASRAC/e-license/JRCの3者間では、使用秒数に応じた分配がスタートしていたとのことで…(ソース
(現在はe-licenseとJRCがひとつになってNexTone)

正直、全く知らんかった。ごめんなさい。
そして情報をくれたお二方、ありがとう。

このジャンル、結構詳しいつもりだったけどこういう取りこぼしてるニュースがあるんだな…と反省。

ちなみに自己管理楽曲で上記の状態にハマるというのは変わってないので注意。

JASRACは正義なのか

「じゃあ結局、JASRACはいいやつだったの?」

となると、そうは言い切れないところが難しいところ。

JASRACに信託した場合と、NexToneに信託した場合の大きな違いの一つが、「演奏権」の部分だ。

超簡単に言うと、

・曲をライブハウスで演奏する
・曲をお店のBGMとして再生する

というような使用をされた時に、

・JASRAC管理楽曲なら、お店から使用料が徴収され、作詞作曲者に分配される
・NexTone管理楽曲や自己管理楽曲だと、そもそも勝手に使ってはいけない

という話である。

これだけ見るとJASRACの方が優れているような感じでもあるのだが、実はここに問題がある。

この方式で徴収されたお金の分配方法が、めちゃめちゃざっくりしていてブラックボックス状態なのだ。

JASRACのブラックボックス

例えばぼくのバンド「SONALIO」や、その前身である「メリディアンローグ」の曲の一部はJASRACに登録されている。

そしてもちろん、今までに何十回もライブハウスでその曲たちを演奏している

だから当然、ライブハウスの人たちはJASRACにお金を払っている
(自分の曲を演奏しているだけなのに、JASRACにお金を払わなきゃいけないのはおかしい!という意見もあるが、ぼくはそこは仕方ないんじゃないかな?と思っている。演奏したのが本当に本人かどうかの確認の方が大変なので)

しかし、ぼくたちがJASRACから分配された「演奏権」に関する印税は、ここ10年振り返っても、なんとゼロなのだ。

明らかに矛盾している

このあたりの問題は、爆風スランプのファンキー末吉さんとJASRACの戦い(裁判)が知られているのだが、これも大枠としては同じ話だ。

ファンキーさんは自身がライブハウスのオーナーでもあり、JASRACに演奏権の使用料を請求されている。
しかし、「作詞作曲家としての自分」に正しく分配されていていない。これはおかしい。と情報発信を行っている。

JASRACとの戦い ファンキー末吉BLOG

演奏権の著作権使用料については他にも多く不満の声を聞く。

カラオケを大音量でかけつつ、それに合わせて生バンドが演奏してくれることにより、お客さんは生バンドで歌う体験ができる、という業態で人気のお店「BAN×KARA」オーナーの滝沢杏奈さんによると

とのことで、使用料の「徴収」の方はかなり熱心に行われている印象だ。

それに対して「分配」がここまで杜撰だと

と言いたくなる気持ちは分かる。

どうすればいいのか

さあこれは困った。

Shazamを応用するなどの技術的アプローチもあるが、
実際「どこで、どの曲を演奏したのか」を全曲、正確にキャッチするのは難しいのは分かる。

しかし、「何十回も何百回も演奏している(されている)のに納得感のある印税が入ってきていない」というアーティストが少なくとも複数存在するという事実から、JASRACの現状の分配方法に問題があるのは間違いない

どうしてもそこが改善できないというのであれば、せめて「こういう基準で、こういう方法でなるべく頑張って正しく分配しています」という情報は公開するべきではないだろうか。

それをJASRACがやらないのなら、NexToneなり、別の会社なりが整備していくしかない

特に店舗BGMについては、ぼくの会社がやれることも多いと思っているので、がんばっていきたい。

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JASRACの何が問題点なのかを解説するから、もう許してあげてほしい

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こんばんは。海保けんたろー(株式会社ワールドスケープ代表/ドラマー)です。

今日の話は、悪名高き(?)著作権管理団体「JASRAC」についての話。

JASRACの炎上

こんなニュースが出て、JASRACがまた燃えている

音楽教室から著作権料徴収へ JASRAC方針、反発も:朝日新聞デジタル

Aさん「音楽教育の芽までつぶす気かー!」

Bさん「儲けることしか考えてないのかー!」

Uさん「私の曲は無料で使っていいからねー!」

とか色々な意見が噴出し、定例行事かのようにいつも通り炎上している。

一方でJASRAC関係者がTwitterで反論していたり、JASRAC擁護をする人もいたりする。

おそらく、音楽業界人でもない限り

「結局、どっちが正しいの?」
「JASRACはクソなの?クソじゃないの?」

の判断がつかないのではないかと思ったので、ぼくなりの解説をしてみようと思う。

彼らは必死に仕事をしているだけ

JASRACは、ざっくり言えば「作詞家や作曲家から著作権を預かり、それを使ってなるべくたくさんのお金に変えて還元するための団体」だ。

だから、

「音楽教室からも利用料を取るなんて!業界全体のことを考えてない!」
「地元の小さなライブバーにも職員が集金に来た!セコい!」

という批判は、気持ちはわかるけど、理屈としては若干ズレている。

彼ら(JASRAC)は、必死に、真面目に仕事をしているだけなのだ。

「取れそうなところがあれば、なるべく大金を取る」というのが彼らの仕事なのだから。

JASRAC信託せざるを得ない理由

それでも、「ひどい!」とか「何もそこまでしなくても!」と思う気持ちはとてもよく分かる。

そして、その気持ちをストレートにぶつけると、

「じゃあ、曲作った人はJASRACに権利を預けなければいいじゃないですか」
という反論が出てくる。

確かに、JASRACのやり方に納得がいかないなら、作詞家・作曲家はJASRACに自分の曲を信託しなければいいのだ。

理屈としては間違いない。
理屈としてはそうなのだが、現実的には難しい。

個人的には、知名度が高くない曲はJASRAC信託しない方がメリットが大きいと思っている。

しかし、知名度のある曲の権利者は、JASRACに信託せざるを得ない

その理由は下記の2点だ。

・印税収入が減る可能性があるから

・テレビなどの放送で使われる可能性が下がるから

それぞれ解説する。

理由1:印税収入が減る可能性があるから

今の日本でJASRACに信託しないということは、

・どこにも信託せずに自己管理する

・NexTone(イーライセンス+JRC)に委託する

の実質2択になる。

どちらの場合も、回収能力がJASRACと比べて大幅に劣るのは避けられないため、
作詞者・作曲者としては印税収入が少なくなる可能性が高い

これは権利者としては言うまでもなく致命的である。

理由2:テレビなどの放送で使われる可能性が下がるから

※追記(2017/2/28)
この段落については認識に間違いがありました。こちらの記事にて訂正しておりますのでご注意ください。

そしてもう一つの「放送で使われる可能性が下がる」については、テレビ局との包括契約の問題が関わっている。

JASRACは、各テレビ局と「包括契約」を結んでいる。

「売上の●%を支払ってくれるなら、JASRAC管理楽曲は使い放題でいいですよ」
という契約
だ。

つまりテレビ局側から見れば、どうせお金を払っているJASRAC楽曲の場合は、さっと気軽に使えるのだ。

逆に、自己管理だったり、NexTone楽曲だったりすると、イチイチ別途で申請した上で、別料金を払わなくてはいけないということになる。

「じゃあJASRAC曲でいいや」
となるのはご想像いただけると思う。

こうなってしまった場合も、権利者にとっては大変な不利益である。

※ちなみに、イーライセンスが「独占禁止法違反だ!」ということでJASRACを訴えているが、なんだかんだグダグダ争い続けていて改善に繋がっていない

どうしたらいいのか

というわけで、

「じゃあ、JASRACに権利を預けなければいいじゃないですか」

と言われても「はい、じゃあそうします」と簡単にできない事情が分かってもらえたかと思う。

つまり、トータルでみたら「JASRACに登録せざるを得ない」といえる状況でありながら、
JASRACのやり方に疑問を感じている権利者が一定数いる
、というのが問題の本質なのだ。

これを根本的に解決するためには、権利者に選んでもらえるように「JASRACに信託する、以外の選択肢」を盛り上げていくしかない。

そこに健全な競争が発生すれば、権利者と利用者がより便利で幸せになる形が浮かび上がってくるはずだ。

※ほんとはもうひとつ、JASRACには「権利者への分配額や分配方法が不明瞭」という大きな問題点があるんだけど、それはまたの機会に

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※追記(2017/3/10)
もうひとつの問題点について書きました。こちらの記事もぜひご覧ください。